2013年を振り返りつつ、改めて読んでおきたい10冊

2013年もいろいろありました。
毎年年末は月次ごとに出来事、訃報を列挙して振り返るようなことをしているのですが、敢えて再読書も含めて、今年を踏まえて改めて読んでおきたい10冊、ということで選定してみたいと思います。

■1位「中国化する日本」

與那覇先生は本年多作ではありましたが、敢えて選ぶならこれを。
日頃伝統や文化、「日本」とは何か、について考えることも多いだろう本Blog閲読の諸氏にも得られるものは多いだろうと思います。
自明だと考えていたこと、思い込んで済ませているもの、それらについて旧来のテンプレートからでは得られない視点を得られることもあるでしょう。歴史学の専門家でないならばなおのこと。

■2位「集団的自衛権の深層」

日米安保や積極的平和主義など、国際社会の中での本邦の位置づけが変化を求められ、また変化を志向していく中で、果たして「集団的自衛権」また「集団的安全保障」とは本来はどのような概念から成り立ち、過去国連を中心にどのように議論され、またそれが認められ、認められなかったのか。コンパクトに概略を掴むのにお勧め。本邦内の表で議論されているそれがいかに周回遅れの議論なのかがよくわかります。

■3位「詳録・皇室をめぐる国会論議」

ちょいと古い本ですが、国会の中で皇室がいかに論じられ、また政府答弁が如何様なものであったのか。膨大な国会議事録を追うのは大変ですが、要所のみを書き出してくれているのでとても助かる一冊。
皇室の有り様が、今上陛下の昨今の踏み込んだ発言の是非や後継問題、また園遊会での一件などもあり、改めて押さえておきたい憲法との兼ね合いや政府見解などをテーマごとに追える良書。
かれこれ10年以上前の本なので、是非直近のそれを加えて加筆・改訂版の出版が望まれます。

■4位「日露戦争と新聞」

とかく「マスゴミ」や「記者クラブ」批判などが飛び交う昨今。また、戦争とメディアの有り様が改めて問われる中、読んでおきたい一冊。
個人的には前大戦へと至る種は概ね日露戦争までに蒔き終わったと考えているので、尚更のターニングポイント。
新聞の独立性、また大衆新聞化する過程で論者の幾人かは新聞に留まらず雑誌をもその論壇の舞台としていった背景が簡潔に分かります。
報道と政治、戦争とメディアを考える際、メディアの多様化が成された今でも決して根幹は変わっていないはずなので、把握しておくべきテーマでもあります。

■5位「選挙演説の言語学」

2009年衆院選における、自民党・民主党を中心とした党首、候補の選挙演説とは果たしてどのような意味合いを持っていたのか(公約の内容ではない)。それを選挙演説の表現の有り様、演説空間から捉えなおした一冊。
民主党が酷い政党であったにしろ、また本人たちに自覚があったにしろなかったにしろ、09年衆院選は本邦の形骸化しつつあった選挙に一石を投じたはずの選挙でした(政権交代、という意味に非ず)。
簡潔ではありますがオバマ大統領の演説も補足的解説があります。
民主党に「騙された」と言う人、また民主党は「二度と御免」と言う人のいずれにも、改めて09年選挙で行われた「選挙演説」を考えてみても良いのではないでしょうか。

■6位「植木枝盛選集」

石橋湛山評論集と悩んだ末に敢えてこちらを。昨今の薄っぺらい新聞論説や議員発言と比較して、格調高い論考も過去にはあったのだ、と改めて認識させられる一冊。「人民は政府をして良政府ならしむるの道あれども、政府単に良政府なるものなし。」に始まる「世に良政府なる者なきの説」は冒頭収録の論説ですが、これだけでも是非読んで頂きたいところ。政府批判は簡単ですが、政府を良道に導くのは有権者であり国民です。もちろん前大戦のように逆に導くのも。

■7位「文学者たちの大逆事件と韓国併合」

ヘイトスピーチの公然化に対して、その根源の一端になるであろう部分を簡潔にまとめた一冊。大日本帝国、そしてその臣民の完成と、それが与えた影響、後世における在日朝鮮人、被差別部落、引揚者の位相、それらを文学表現から掬い上げた一冊。新書サイズなので内容も簡潔で論考も深くはなく、また視点もある意味では一面的に過ぎるところはあるものの、「行動する保守」や「在日特権を許さない市民の会」が在日ヘイトに限らず部落や生活保護なども標的とし、「普通の国民」を自称する局面において、本書の内容から得られるものは多いでしょう。

■8位「アメリカの保守とリベラル」

本邦でも「保守」「リベラル」とは何なのか、が問われている昨今において、また民主党の壮大な失敗を経て二大政党制への疑問が生まれ、また「反自民」という極と言えない極を志向する傾向に対して、選挙制度・政治文化の違いはあれど参考になるだろう一冊。内容はクリントン政権まで、ですが。
リベラルと保守の捩れ、保守の分裂と先鋭化、果たしてそれをもたらしたリベラルの経済政策の優位性(現在ではやや否定的側面も指摘されていますが)、それでも「リベラルが勝ち得る可能性」を本邦で探るのであれば、リベラル陣営こそ読んでおくべきかもしれません。

■9位「新しい左翼入門」

戦前からの左翼運動の思想的対立(社共対立)等をまとめた運動史。内ゲバと評されることもあるそれがいかに生じ、またいかなる意味を持っていたのか。一括りで「左翼」としてまとめて片付けてしまうことの暴論も顕になるし、また逆に左翼の中でも時に大勢に、または妥協と抗争の果てにその立ち位置を反転させることさえあった本邦左派運動を簡潔に知ろうと思うなら読んでも損はないでしょう。
もちろんこれも新書サイズなので、個々の運動の内実や政策・思想変化に対する論考や多角的視点については専門書に譲るべきでしょうが、あまりに何も知らずに安易に否定するのであればこそ読んでおきたい一冊(「新左翼」ではなく「左翼」に対する「新しい入門書」であることだけ間違えることのなきよう)。

■10位「ネオナチ」「右に傾くとはどういうことか」
ネオナチ―若き極右リーダーの告白

10位は同列でこの二冊。
前者は東独のネオナチのリーダーがいかに組織内での体制を固め、というと聞こえは良いが、いかにネオナチが愚劣な集まりかがよくわかる一冊。これはそのリーダーであるインゴ・八ッセルバッハのインサイド・レポート。本邦のネトウヨに対する考察も進み始めている昨今、いろいろな意味で参考になると思われる一冊。
後者は左翼から転向した須藤久(日本共産党除名)の著。戦後のありとあらゆる「市民運動」「革命運動」と称されるそれが、いかなることを掲げそれを「成し遂げられなかったのか」についての批判的考察。「右翼とは文字を手にすることができなかった被差別人民の前衛なのである」という前書きに引用される一文は非常に示唆的であしょう。
昨今の右翼批判、左翼批判の少なくない部分は、これらの考察を踏まえて改めてそれ故に批判されるべき点は多々あると思います。それが愛国運動であれ反ヘイト運動、反原発運動であれ。

他にもナチスに準える表現が増えている気がするのでナチス論考の10冊とかでも良かったのですが、それはそれでいささか手に入りづらいものもあるので、一年の終わりにはやはり昨今の動きを踏まえて来年どう考えるべきなのか、の参考になりそうなものを選んでみました。
皆様の読書ライフが来年も素敵な一年になりますよう。

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