大統領予備選に見るアメリカ社会の変化の兆し

とてもお久しぶりです。アメリカの大統領選挙予備選が大変混沌とした状況になっています。現時点での雑感をまとめてみたいと思います。

共和党はトランプ氏が圧勝、ブッシュ氏惨敗で撤退決定となりました。ブッシュ氏支持層は今後はルビオ氏に流れるでしょうからトランプ氏vsルビオ氏という枠が基本的枠組みとなるでしょう。クルーズ氏は本命にはならないでしょうし福音派の票が少なからずトランプ氏へ流れているのでこれ以上の浮上は無いでしょう。共和党は党としてはトランプ氏を避けたいでしょうからルビオ氏にどこまで集中できるかが問われるでしょう。
共和党主流派はもう選択肢はルビオ氏しか残っていないので、次の予備選でルビオ氏が何処までトランプ氏の勢いを抑えられるかが注目です。クリスティ氏、ブッシュ氏、ケーシック氏あたりが本来の共和党主流派だったはずなのですが、クリスティ氏がルビオ氏への攻撃へ注力した結果トランプ氏を利する形となり既に撤退、今回ブッシュ氏が撤退となりました。
ルビオ氏は以前の討論会の醜態をある程度挽回した形とはなりましたが、ブッシュ氏も討論会でのパフォーマンスは下手な印象で、主流派と目された候補が軒並みトランプ氏のパフォーマンスに押されている印象です(ブッシュ氏の撤退決断が早かったことからもしかしたらルビオ氏大統領、ブッシュ氏副大統領という線での主流派集約が図られる可能性はあります)。

一方の民主党はヒラリー氏が薄氷の勝利といった感じでサンダース氏の善戦が際立ちました。半月くらいで一気に追い上げた印象です。ヒラリー氏は本来黒人層の支持が厚いと言われていたにも関わらず、前回のニューハンプシャーに続いて接戦となりました。というよりサンダース氏への支持は恐らく当初のヒラリー氏の予想をはるかに超えるものになっていることが改めて示されたと言えるかもしれません。
実際、ニューハンプシャー戦の後に行われた調査では黒人層でも若年・中年層の相当の比率がサンダース氏支持へ流れていることが明らかになっていました。サンダース氏の今回の僅差の敗北は実質的には「ニューハンプシャーの接戦はまぐれではない」ということを如実に表している結果であり、ヒラリー氏と対等に勝負できる候補であることを見せたという点で敗北とは言い切れないものがあります。
次の予備選はヒラリー氏の勝利は手堅いところですが、サンダース氏の追い上げ方次第ではスーパーチューズデーでも候補が確定できない可能性が出てきました。サンダース氏はそもそも大統領候補になるなど有り得ないとされてきた中での出馬でここまで票を集めており、トランプ氏の地滑り的集票と合わせてアメリカの政治基盤の変化が表れているように感じます。

トランプ氏とサンダース氏の支持は重なっていないとの指摘もありますが、どちらも「既存の民主党共和党のワシントン政治、ウォール街への大きな反発」で支持が集まっていることから、このままトランプ氏が共和党候補として勝ち抜けして民主党が本命ヒラリー氏となった場合「反ワシントン」票として民主党・共和党の枠を超えてトランプ氏へ支持が傾く可能性さえ考慮する必要が出て来た気もします。トランプ氏・サンダース氏が勝ち抜けた場合ブルームバーグ氏の出馬が取り沙汰されていますが、万一にもブルームバーグ氏には勝ち目はないでしょう。
いずれにしても恐らく両党の予備選前の当初の思惑を超えた「反主流派」票が表れてきているのは紛れもない事実で、このことは予備選開始前の選挙予測が悉く外れていることからも理解できます。民主党・共和党という二大政党に特化した政治体制になっているアメリカですが、長期的には第三の政党が組織される可能性が生じてきた印象があります。それくらい反ワシントン、反ウォール街の勢いが強いと感じます。そして民主党・共和党の両党と異なる第三の勢力が実際に組織された場合、それは恐らく民主党的リベラルよりも左派で、また国際的位置付けとしての「世界の警察」アメリカを放棄する政策が打ち出されることになると思われます(実際サンダース氏はそういった主張を頻繁に繰り返しています)。また、従来南部福音派の動向が大統領選を左右するという指摘がしばしばありましたが、今回福音派の票からクルーズ氏ではなくトランプ氏へも票が流れている点、長期的にムスリムがクリスチャンに匹敵する母集団になることが予測されている点を考慮すると、白人系タカ派共和党vs黒人系リベラル民主党といった(ある意味では安直とも言える)枠組みは人口構成の点からも宗派勢力の点からも崩れる可能性を秘めています。加えて白人人口が「少数派」へ転落することも予測されており、第三の左派勢力が組織された場合、福音派・ティーパーティー勢力が一層先鋭化する可能性もあります。

今回の選挙戦はまだまだ予断を許さない状況となっていますが、長期的に視た場合、オバマ氏が初のブラックプレジデントになった選挙以上にアメリカ政治史の中で大きなターニングポイントになった選挙という歴史評価になる可能性もあるように感じます。日本で丸山参議院議員の迂闊な発言がアメリカで報道された際、「アメリカは劇的に政治を変化させることができるが日本の制度は硬直化している」とも指摘されていました。この劇的変化は既に「起きつつある現実」と言えるかもしれません。今回の大統領選がルビオ氏vsヒラリー氏という、現状考慮し得る「従来の枠組みで考えれば妥当」な大統領選になったとしても、変化は確実にアメリカの市民社会で構成されつつあるように感じられます。それは自由主義の後退ではなく、「資本主義」に対する一つのアンチテーゼとして、経済的観点から社会矛盾を突くものと言えるかもしれません。

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