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炎上商法が焼却する果てに

 昨今、いわゆる「炎上」することが一つのマーケティングの「成功」事例になりつつある。「アンチ」が扇動することで、結果として反対する人の思惑とは裏腹に、その批判対象が「売れる」という現象である。例を挙げるまでもなく、いくらでも思い当たることは身近にあるだろう。良し悪しを別とすれば、大統領の座を射止めたトランプ氏のグッズが早々に大量に企画・販売されている現状を挙げられるかもしれない。差別/反差別界隈も同様だろう。「こんな酷い本がある」と流布されるたびにその本はAmazonのランキングを上げ、書店では入荷待ちとなることも一つならずある。
 
 直近で最大の炎上商法の事例を挙げるとするならば、間違いなく「えんとつ町のプペル」を挙げることができる。今年2017年の五本の指に入るくらいの事例かもしれない(まだ1月だが)。私はこの書籍の制作にあたって、相当数に上るだろうイラストレーター他との間でどのような契約が結ばれているか、預かり知る立場にはない。「それにしても、「クリエイターの不当労働」まで絡めてくる輩まで現れた。
いやいや、インターネット上で無料公開した方が本が売れる(結果的に売れた)んだったら、むしろ逆じゃん。クリエイターさんに入る収入は増えるじゃん。」(声優・明坂聡美の危うさ。)もしかしたら、契約次第ではその通りなのかもしれないし、そうではないのかもしれない。しかしながら、この言葉は賛否の生じた段階での「これから、無料化できるところから無料化していって、『お金』なんて、そもそも存在しなかった時代や、地域で、おこなわれていた『恩で回す』ということをやってみます。」(お金の奴隷解放宣言。)とは相反する。前者は「売れて還元できれば問題ない」かもしれないが、後者はそんな話ではない。端的に言って開き直っているとしか感じられないだろうし、あくまで結果論でしかない。ついでに言えば、「お金の奴隷解放宣言」なるエントリーの最後の「…てなワケで俺は無料にするけど、その代わり他のクリエイターに「西野はタダにしたんだからおまえもしろ」なんて絶対言っちゃダメよ。」は「カッコイイから」という理由で後から追加された文言であるし、「「お金が無い人には見せませーん」ってナンダ?
糞ダセー。……いや、モノによっては、そういうモノがあってもいいのかもしれません(←ここ大事!ニュースになると切り取られる部分ね)。しかし、はたして全てのモノが『お金』を介さないといけないのでしょうか?」という文言がある種の免罪符になるのかもしれない(お金の奴隷解放宣言エントリー内)。一方で「ここを絶対に押さえておかないといけないのだけれど、『えんとつ町のプペル』は″情報は無料だけれど、物質は有料”という点。」という言及が後から追加されている(声優・明坂聡美の危うさ。エントリー内)。ここから透けて見えるのは、「モノ」と「物質」という使い分けなのだ。「情報」が如何にマネタイズされづらいか、その問題については情報媒体(紙)の衰退を見れば自明とも言える現象だが、その帰結はあまり好ましいとは言えないだろう。なにより、2,000円の絵本が買えない層はどのような層が想定し得るだろうか。一回だけの2,000円を支払うのが困難な層であると仮定した場合、そもそもオンラインを安易容易に使える層ではないのではないか?いわゆるデジタルデバイドの問題である。確かに書籍という媒体は、「全体を見て手元に置いておきたいと思えるかどうか」は極めて大きな要素ではある(実際私も少なからずそれに該当するだろう)。
 しかしながら、一方のエントリーでは「糞ダセー」とまで言い切って、片や後日のエントリーでは「結果的に売れた」ので還元できるから良いではないかとばかりに書くのである。しかも児童書としては相当に売った後で、の話だ。児童書の増刷可否は3,000部とか5,000部といた、極めて小ロットでの販売可否にかかっている中で、万の単位を大きく超えて売り切った後での話である。当初から斯様な姿勢を見せてやっていれば、さぞかし「カッコイイ」だろうが、クラウドファンドで製作費を賄って相応に売った後でのこれである。懐が何一つ痛まない状態で、エエカッコシイをやったところで、それこそ「糞ダセ―」話でしかないかもしれない。斟酌する内容としては、「クリエイターさんに入る収入は増えるじゃん。」という文言が文字通り、関係した制作段階で関わった様々なクリエイターに還元されるような契約であれば、それは確かにそうだろうとは思う。それでも炎上商法が良いか悪いかは別の話だが。
 極めて残念なことながら、貨幣経済というものはそれとして機能をしていて、「お金がそもそも存在しなかった時代」などと言われても、とてもそこまで戻れるとは考えられない(或はボランタリーの対価としての様々な「ポイント」みたいなものはあるかもしれないが、地域貨幣含めてそれさえ「お金」の信用の根本が何処にあるかの差異でしかなく、「恩」よりは遥かに「金」に近いだろう)。
 マッチポンプの如く炎上の燃料を投下し続けている訳なので、是非関係したクリエイターにより大きな還元をして頂きたいものである。まさかそこで「売れた分だけ要求するなんて糞ダセ―」とか「そもそも売上比例配分契約になっていない」などということはないと願いたいものだ(結果クリエイターの収入が増えれば良いということであれば、そうなるだろう)。デジタルツールの進展に伴い、クリエイティブ界隈の「正当な対価要求」はなかなか通り辛いものがある。プログラマー然りである。時給換算何時間等の「作業換算清算」以上のことを求めるのはなかなか難しい時代なのだ(それこそ知名度があれば有名料で取れるだろうが、大多数はそんな知名度など無いわけで、このクリエイティブへの支払いのダンピングは上場企業だろうが平気でやってくる)。死屍累々のそれらの上に、或は「恩」で回すことで関係者が結果「得られるものが多い」こともあるのかもしれない。そうだとしても炎上商法は関心しないが、まあ得られるものが皆無よりはまだ良いだろう。
 私は糞ダセ―ことに、こういった駄文を書いても一銭にもならないし、結果として炎上商法の加担にもなるだろうが、それでも参加した各クリエイターに還元されれば駄文を書く意味もあろうというものだ。参加したクリエイター諸氏は、手元の契約書を確認して、正当な対価を受け取れるよう、必要な対応をするべきかと思う。炎上商法の果てにあるものは、恐らくクリエイター諸氏が如何にその「マーケティング」とやらで得た収益を回収できるか、でしょう。別に私がどうこう言う話でも無いのかもしれませんし、「お前がお金の奴隷だ」と言われるかもしれませんが、「不当労働」のニュースに胸を痛めているらしい西野氏には、「正当な対価の要求」がいかに不当労働の中で締める値が大きいものであるか、恐らく自覚頂いていると思いますので、その点は遠慮も配慮も必要ないかと思います。一銭にもならないお金の奴隷ながら、奴隷根性を発揮して是非そのように対応し、得るべきものを得られるよう、祈るくらしいかできませんが、お祈りしております。

 最後に。
 
 声優の明坂聡美さんへ。
 クリエイターとして、表現者として、「無料化の波に抗えない」などというそれに、異を唱えるだけの根拠も主張もあるだろうし、「自分の首を絞める」などという言葉に抗するなら、恐らくその声を支える人は一人二人ではないだろうと思います。相手は「ロボットがどんな風に人間の仕事を奪っていくかに興味があるんです。どの職業から、ロボットに奪われてなくなっていくのか。ロボットを知れば、人間が分かるんじゃないか、と思う部分があって」という理由で、株式会社サビーボの「へんてこロボット博士」に就任するような人です。「最近では「芸人を引退して絵本作家に転身する宣言」で世間を驚かせたかと思えば、なんとその翌日、絵本作家も早々に引退。今度はパインアメ(ご存じない方は検索してください)の「特命配布主任」に転身するなど、めまぐるしいペースで肩書きが変わっていることが話題です(ご本人曰く「いろんな人に怒られている」そう)。」(キングコング西野亮廣さんがロボットノートの『へんてこロボット博士』に就任!)。
 少なくとも2016年7月の段階で芸人も引退し、その翌日には絵本作家も引退したということになっている相手ですので、今回の「絵本」がどのような経緯で制作されたにしろ、名指しで斯様なことを指摘されたことに対して、いくらでも反論する権利も自由もあると思いますし、別に喧嘩しろとか戦争しろとか言いませんが、言いたいことを遠慮なく言うだけの「御指名」だったと思います。